クラウドは魔法じゃない
― 現場インフラエンジニアから見たクラウドのリアルをお伝えします。
🟦 はじめに
「クラウド」と聞くと、雲の上にある、よく分からないけど便利なサービス——そんなイメージを持つ人も多いかもしれません。
でも実際には、クラウドは魔法でも空想でもなく、世界中のデータセンターに並ぶ物理サーバとネットワーク機器の上で動いています。
GmailやYahoo!メールだって、クラウドとはいえ、物理筐体の上に構築されたシステムを使っているだけ。
見えないだけで、確かにそこに「実体」があります。
🏢 クラウドの正体は巨大データセンター
AWS、Azure、GCPといったクラウドサービスの裏側では、巨大なデータセンターが休むことなく稼働しています。
そこにはサーバラック、スイッチ、ルータ、ファイアウォール、ストレージが物理的に並び、
利用者はそれらを意識せずに「仮想サーバ」「VPC」「ストレージ」として利用しています。

🔄 オンプレとクラウドの共通点
| 項目 | オンプレ | クラウド |
|---|---|---|
| サーバ | ラックに置かれた物理サーバ | 仮想化基盤上のVM(実体は物理サーバの一部) |
| ネットワーク | スイッチ、ルータ、FWを設計・構築 | VPC、サブネット、セキュリティグループ(概念は同じ) |
| ストレージ | SAN、NAS、LUN設計 | EBS、S3など(用途は同じ) |
クラウドの構成要素は、呼び方が違うだけでオンプレと本質的には同じです。
⚠️ トラブルの裏側
クラウド障害として報じられるトラブルの多くは、実は物理的な障害が原因です。
データセンター内のネットワーク断や設定不備が「クラウド障害」としてニュースになることもあります。
結局、オンプレと同じで、物理の上に論理が乗っているだけ。
「クラウドの向こう側」にも人と機械が働いています。
🛠️ 運用・設計で大事なこと
「クラウドだから仕組みを知らなくていい」――そう思った瞬間に、トラブル対応は行き詰まります。
IPアドレス、DNS、ルーティング、ファイアウォールポリシーといった基礎的なネットワーク知識は、クラウドでもそのまま必要です。
結局のところ、インフラの土台を理解している人がクラウドでも強い。
オンプレの経験は、クラウド時代でも決して無駄にはなりません。
✍️ 実体験:AWS案件での運用設計
自分がAWS案件に参画したとき、決定後に本格的にAWSを覚えながら、運用設計を整備しました。現場で実際にやったことは、こんな感じです。
- MFA設定手順の整備
- YUMサーバ・WSUSサーバの構築
- CloudWatchによる監視設計
- S3コマンドの習得と運用手順書化
- アカウント管理(IAMロール、スイッチロール)
- AMIバックアップ運用
案件が決まってから覚えたけれど、現場で形にできた。
それが“魔法じゃないクラウド”との向き合い方だと思う。
🧭 まとめ
クラウドは便利で柔軟ですが、魔法の箱ではありません。
実際には、世界中のデータセンターにある物理サーバとネットワーク機器の上に成り立っています。
オンプレを経験して得た「基礎の理解」があれば、クラウドを正しく設計・運用できる。
クラウドを学ぶ第一歩は、「その裏側にはオンプレと同じ仕組みがある」と知ることから始まります。
結局、クラウドも物理の上で動くリアルな仕組み。
ネットワークもオンプレから覚えたら簡単。いずれそのあたりも記事にします。

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