キャリアの転機 ― 派遣契約への挑戦
キャリアを始めて1年半。
情シス寄りの運用保守で経験は積んだものの、給与は低く、先が見えない状況に直面していました。
「もっと設計や構築をやりたい」
そう思い、思い切って転職。
SESの派遣契約で時給約2050円。今思えば決して高くはない条件でしたが、中堅SIer案件で設計・構築に挑戦できる環境を選びました。
設計・構築を学んだ日々
ここで初めて本格的に以下を経験:
- ファイアウォールの設定
- サーバ構築
- 設計書の読み方・書き方
現場はハードでしたが、運用だけでは触れなかった領域に踏み込むことで、一気にスキルの幅が広がっていきました。
突然の炎上 ― 3年目での試練
ある日、プロジェクトリーダーが家庭の事情で長期離脱。
残ったのは自分を含め3人のチーム。
ところが、実質的に以下すべてを1人で担当する状況に:
- 設計・構築
- 運用
- ドキュメント作成
- 運用説明
PLは交代で顧客打ち合わせ時のみ在籍。時々様子を見てくれる程度でした。
担当技術:
- VMware仮想基盤
- Oracleバックアップ
- Systemwalker Centric Manager / Operation Manager
- NetVault+LTOオートローダによるバックアップジョブ
昼は構築、夜はテスト、週末は手順書作成。
月200時間を超える残業。休日ももちろん出勤。
納品前にはストレージ故障対応、アラート一覧表も納品対象。
夜中にアラート対応の電話が鳴り、寝不足のまま次の日も出社する…そんな日々が続きました。
それでもやりきった理由
途中で投げずにやり切れたのは、初期キャリアで叩き込まれた基礎力が支えだった。
- レビュー文化:赤ペン修正だらけだった経験のおかげで、ドキュメント作成は得意だった
- 問い合わせ対応:PC修理やユーザ対応で鍛えられた「トラブル切り分け力」
- 先輩の言葉:「知識なんて、知ってるか知らないかだけ」
必死にやっているうちに、「この人なら大丈夫」と信頼され、なんとかプロジェクトを完遂。
何が重要かと言われれば、ドキュメント作成能力。
ベンダー作成ドキュメントを手本に修正して覚えていく――それが経験となり、血肉となった。
炎上案件から学んだこと
- 現状把握の速さ
全体像をすぐ掴むことが最優先。迷ったらまず俯瞰。 - タスク分割
大きな課題を小さく分け、一つずつ消していく。進捗は“可視化”が鍵。 - 不要なことはやらない
止血が最優先。完璧は後回し。まずは現場を止めないこと。 - 信頼を勝ち取る
最後まで逃げないことで、次のチャンスに繋がる。火消しは信用の積み重ね。 - 運用手順書
実運用を想定した手順書。机上の空論ではなく、“手順になっていること”が重要。 - 技術は盗む
大工が親方の技を真似して覚えるように、インフラエンジニアも人のやり方を真似して自分のものにする。
コンフィグは出来上がった状態から勉強する。
ファイアウォールも同じで、構築済みの設定を見て覚える。
要塞化やセキュリティも同じく、“思想の踏襲”が重要。
まとめ
エンジニア3年目で経験した200時間残業の炎上案件。
辛かったけれど、この経験が自分を「火消し要員」へと押し上げ、今のキャリアの土台になりました。
技術は盗む ― 思想ごと真似する
- 大工=現場で見て盗む文化
→ ITも同じで、「教科書より動いてるコンフィグ」が最高の教材。 - コンフィグから学ぶ
→ 例えば Cisco や FortiGate の設定を眺めて「ACLの書き方」「冗長構成の流儀」を覚える。 - ファイアウォール設定から学ぶ
→ ルールの優先順位、ログ取得の仕方、ポリシーの思想を見て「こういう守り方をするんだ」と理解する。 - 要塞化やセキュリティ思想の踏襲
→ 単なる設定コピーじゃなく、「なぜこの設定を入れるのか?」という思想を読み取って真似することが大事。
→ それを積み重ねると、自分の“型”ができる。
つまり「技術は盗む=思想ごと真似する」が本質。
単なるコピペじゃなくて、“なぜそうするのか”まで含めて盗むことがプロへの成長につながります。基盤技術は本当に職人色の強い世界。
だからこそ、先人の技術や設計思想を真似し、理解し、そして自分の型に昇華させていくことが大切だと思います。